お知らせnews

『Jineko.net ジネコ 2014 Summer vol.22』に掲載されました。

2014.06.17

<Jineko夏号>のP.68『セカンドオピニオン』で、
院長が患者さんの質問にお答えしています。

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みおなさん(34歳)からの相談

■卵管水腫持ちの場合の体外受精
昨年から治療を始め、2回タイミング療法を試した後、子宮卵管造影検査で両側卵管水腫と診断されました。その後、専門クリニックに転院して、2回体外受精をしましたが陰性でした。この病院は先生の方針で、低刺激のみ、採卵後2〜3日目の新鮮胚移植しか行なっていません。水腫の影響で妊娠しないのか確認したところ、「排卵前の子宮エコーには水腫からの逆流が見られないから、恐らく影響はないだろう」とのことでした。水腫がある場合は胚盤胞移植のほうが、妊娠率が高くなると聞きます。また、低刺激で毎回1個しか卵胞が育たず、その卵も4回採卵したうち2回しか授精していないという点を踏まえ、転院した方がいいのでしょうか?水腫もこのままでいいのでしょうか?

【インタビュアー】
やはり手術で卵管を切除してから胚移植すべきでしょうか?
【院長】
卵管水腫で卵管を取るか取らないかは意見の分かれるところなのですが、私が絶対に取ったほうがいいと思うケースは、超音波検査で両側が水腫になっていることを確認できるような場合です。子宮卵管造影検査をして初めてわかるような症例なら取らなくてもいいかもしれませんが、炎症部分から子宮内腔に液体成分が逆流して溜まってしまっているような症例は、切除すべきでしょう。グレードのいい胚盤胞を移植しても着床しなかった場合など、私は基本的に手術後の移植をおすすめしています。
理由は、卵管を切除すると、その影響で卵巣への血流が悪くなり、術後に採卵数が減ってしまうこともあるからです。年齢の高い方や卵巣機能が低下している方の手術はケースバイケースです。

【インタビュアー】
移植の方法についてですが、卵管水腫の場合、やはり胚盤胞移植がよいですか?
【院長】
分割胚から胚盤胞まで、どこで受精卵を育てるのが一番いいかという話なのですが、受精卵にとって最も居心地が良い環境は、本来、精子と卵子が出会う卵管内です。次にいいのが、卵管内の状態に近づけた体外受精の培養環境。良くないのは、子宮の中にずっととどまり続けている状態と考えられています。
人間は他の動物と違って、卵管がなくても妊娠することはできますが、受精卵が卵管内を移動できずにずっと子宮の中でとどまっている状態は、あまりよくないといわれています。たとえば、分割胚移植でうまくいかない患者さんに胚盤胞移植をすることで、妊娠できるケースが40%とのデータがあります。子宮内よりも良い環境の体外受精で受精卵を胚盤胞まで育ててから移植することで、妊娠に至ったケースが当院でも多くあります。

【インタビュアー】
病院の方針が低刺激による新鮮胚移植のみで、転院も考えていらっしゃるようですが。
【院長】
初期胚の新鮮胚移植で何度か失敗されているということを踏まえると、卵管水腫はやはり手術すべきでしょう。結論としては、卵管水腫を切除し、良い受精卵を多く育てるために、卵巣年齢が問題なければ、刺激周期で採卵数を増やし、分割胚ではなく、胚盤胞まで育ててから凍結胚盤胞移植を行なうのがベストだと思います。医師によって治療方針が異なるのは仕方ありませんが、治療の選択肢によっては転院も視野に入れられたほうがいいかもしれません。
胚盤胞移植については、新鮮胚でも凍結胚でも5日目の胚盤胞ではそれほど妊娠率は変わりませんが、6日目の胚盤胞を移植した場合、凍結胚移植のほうが20〜30%近く妊娠率はアップします。もし胚盤胞移植をするとしたら、Day5の胚盤胞なら新鮮胚でもいいかもしれませんが、Day6の胚盤胞なら必ず凍結胚盤胞移植がいいと思います。