タイミング療法について

タイミング療法

不妊治療というと妊娠までの過程において手を加えていると思われがちですが、タイミング療法の場合には最も妊娠しやすい日を指導すること以外は自然妊娠と同じです。
当院では、不妊原因が見つかった場合には原因疾患の治療や投薬を行いながらタイミング療法を行います。来院時には卵胞がきちんと発育しているか、頸管粘液の分泌は増えているかなどを確認しながら、排卵日を特定し、その後、排卵したか、黄体ホルモンの分泌は正常かを調べます。

スケジュール

来院できる方
  1. 月経10〜12日目に来院して頂き、卵胞の計測を行います。
  2. 卵胞経が18mm以上になるまで数回超音波を行い、採血にてエストロゲンの値を測定し、排卵日を特定します。
  3. 医師より「○月○日に夫婦生活を行ってください」と指示がありましたら、その日に夫婦生活を行ってください。
  4. 後日、排卵の確認を行い、一週間後(高温期)に着床や妊娠に関係する黄体ホルモンの分泌状態を確認します。
来院難しい方

お仕事などで来院が難しい場合には排卵検査薬(尿中のLH)を検査します)を使用し、ご自宅で排卵予測を行うことができます。

  1. 月経10〜12日目に来院して頂き、卵胞計測します。
  2. おおよその排卵日をお伝えし、排卵検査薬を数回分お渡しします。
  3. 医師から指示のあった日より1日2回排卵検査薬を使用してください。陽性になったら、その日か翌日に排卵が起こる可能性が高いので夫婦生活をもつようにしてください。

投薬をプラスしたタイミング療法

タイミング療法や不妊原因を調べる検査で排卵障害や黄体機能不全(黄体機能の分泌が悪い)が見つかった場合には、次のステップとして、排卵誘発剤(内服薬や注射薬)を併用したタイミング療法にステップアップします。

排卵誘発剤

内服薬
クロミッド(クエン酸クロミフェン)
脳に作用して排卵を促すお薬です。視床下部の脳下垂体に働きかけ卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促し、卵胞を発育させます。
服用は月経3日目から5日間、1錠ずつ服用しますが、卵胞発育が見られない場合には2錠、3錠と増やすことがあります。服用12〜14日で排卵しますが、自然に排卵できない場合にはhCGという注射で排卵させます。
副作用として、顔面紅潮感、霧視、尿量増加などがあります。腹水などがたまる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症率は0.4〜0.5%程度ですが重症になることは稀です。
双子などの多胎妊娠の確率は2〜5%程度となっています。またクロミッドの長期服用により、頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなるといった副作用がでることがあります。
セキソビット(シクロフェンル)
同様に、脳に作用して排卵を促すお薬です。視床下部の脳下垂体に働きかけ卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促し、卵胞を発育させます。
セキソビットはクロミッドと比べマイルドな排卵誘発剤で、卵巣過剰刺激症候群や頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなるといった副作用がほとんどありません。
セキソビットの服用は月経周期の3日目もしくは5日目から1日4〜6錠を、5日間続けて飲むことが一般的です。クロミッドで、頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなるといった副作用が出た場合に、セキソビットに変わることがあります。
副作用は頭痛、めまい、卵巣過剰刺激症候群などがありますが、クロミッドと比べ非常に稀です。
注射
hMG/FSH
排卵前の低温期にhMGを注射して、その後に成熟した卵胞をhCG注射によって排卵させる治療法をHMG-HCG療法(ゴナドトロピン療法)といいます。

hMG/FSH製剤は卵巣に直接働きかけて卵胞発育を促します。クロミッド服用で効果が得られない場合に使用します。 ほとんどの症例で排卵をおこすことができますが、一方で多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群のリスクが高くなります。多胎妊娠の確率は20%程度、発症頻度は10%〜20%程度といわれています。

hCGは下垂体から分泌される黄体化ホルモン(LH)と同様の作用を持つ薬剤で、成熟した卵胞に作用して排卵を促すお薬です。投与後おおよそ34〜36時間後に排卵が起こりますのでより正確に排卵時期が特定できます。

また、黄体機能不全など黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌に不妊原因があるときには、基礎体温の高温期中(排卵後)にHCGを投与することで黄体ホルモンの分泌を促す効果もあります。発症が疑われる場合には、hCG投与は控えます。

  • ※このHCG注射を投与している周期では、HCG注射の影響により妊娠していないのに妊娠検査薬で陽性反応を示すことがあります。

タイミング療法を行う期間

通常、不妊の原因のないカップルで妊娠する確立は周期あたり20〜25%といわれています。この確立でいくとタイミング療法4〜5周期で妊娠する計算になります。ですから、だいたい半年間くらい試みても妊娠されない場合には人工授精へのステップアップをお勧めします。また、奥様の年齢が高齢(35歳以上)の場合には少し早めにステップアップをお勧めすることがあります。あくまで目安の期間になりますのでご夫婦の希望をお伺いし、相談の上で今後の治療方針を決めていきます。