不育症とは

妊娠するものの流産を繰り返してしまうことを不育症といいます。
不育症のほとんどが反復流産(2回連続して流産)または習慣流産(3回連続して流産)となります。
検査を行い原因検索し、その原因にあった治療を受けていただき、妊娠後の経過観察を最大限に行えば、流産する確率は下がると考えています。

不育症のいくつかの原因

  1. 母体と胎児間の免疫学的流産
  2. 自己免疫の異常
  3. 子宮奇形
  4. 染色体異常
  5. 原因不明

不育症検査

当クリニックでは2回の流産経験がある患者様対して不育症検査を実施しております。
ご希望がありましたら以下の項目の検査をお受けいたします。
尚、予約が必要な検査もございます。来院時に受けられず後日になる場合がありますので予めご了承ください。
費用につきましては、一部自費となる項目がございます。検査ご希望の患者様には事前に金額の提示をさせていただき、納得した上で受けていただいております。
医師までご相談ください。

  検査項目 不育症の原因
染色体検査 夫婦の染色体検査(G-banding)
流産胎児染色体検査
子宮形態検査 経膣超音波検査法
子宮卵管造影検査
子宮鏡
MRI
免疫学的検査
  • ・抗カルジオリピンIgM
  • ・抗カルジオリピンIgG
  • ・抗CLβ2GPI複合体
  • ・抗PセリンIgG抗体
  • ・抗PセリンIgM抗体
  • ・ループスアンチコアグラント(LAC)
  • ・抗PEIgM抗体
  • ・抗PEIgM抗体

その他の自己抗体検査

  • ・抗核抗体
  • ・抗SS-A抗体
  • ・抗SS-B抗体
  • ・抗DNA抗体
  • ・不規則性抗体
内分泌学的検査 基礎体温
末梢血液一般検査
糖尿病検査
血糖、ヘモグロビンA1c
甲状腺機能検査
FT-3、FT-4、TSH
下垂体機能検査
PRL、E2、P4
凝固系検査
感染症検査 クラミジア検査(初診時に行います)
染色体検査
ヒト染色体は46本(22対の常染色体と2本の性染色体)からなっており、染色体になんらかの異常が認められる場合に流産する可能性が高くなります。
残念ながら染色体異常に対する根本的は治療がありません。近年日本では流産予防を目的とした着床前診断が始まっていますが、当院では実施しておりません。
検査をご希望される方はご紹介させていただきます。
抗リン脂質抗体
流産・死産と大きく関わっている自己抗体です。他に重症妊娠高血圧症候群(中毒症)や胎盤機能不全にも関連していることが分かっています。
抗リン脂質抗体が陽性なら、流産しやすいと考えられます。
血液が固まりやすくなりその結果、血栓をつくってしまい(血栓症)胎児(胎盤)に血液が流れず、流産を引き起こしてしまいます。
同種免疫異常
胎児は父親の遺伝子を引き継いでいますので、母体にとっては異物です。
異物を排除することが免疫の役割ですから、本来の働きをすると、妊娠が継続しないことになります。
しかし、通常はこのような事態にならないようなしくみがあるのですが、この仕組みに異常があると、いわゆる同種免疫異常による流産が起こります。
NK細胞活性
NK細胞とは遺伝子が異なるだけで侵入者を攻撃してしまう血液中のリンパ球の仲間のことをいいます。
適度に高い場合はよい作用(免疫力高めるなど)に働きますが、高すぎると胎児を攻撃し流産を引き起こしてしまいます。
血小板凝集能
血液中の血小板の凝集が長期に渡って持続すると、血液の粘度(血液粘調度)が高まってしまい、血栓症を起こしてしまいます。
凝固系検査
血液凝固にはいろいろな因子が複雑に関係しています。その因子に異常がある場合、血栓症を起こしてしまいます。

原因別治療について

染色体異常
予防あるいは治療方法はありません。遺伝カウンセリングをご希望される方はご紹介させていただきます。
子宮形態異常
子宮形成術、筋腫核出術、経管縫縮術を行います(手術は提携病院先にて行うことが可能です)。
自己免疫異常
抗凝固療法として低用量アスピリン療法、ヘパリン療法を行います。単独または併用で使用します。
同種免疫異常
免疫療法として夫リンパ球を輸血する方法がありますが、安全性が十分確立されていないため当クリニックでは行っておりません。
内分泌異常
内科的治療(程度により内科を受診していただくこともあります)を行います。
凝固因子異常
抗凝固療法として低用量アスピリン療法、ヘパリン療法を行います。単独または併用で使用します。
感染症
抗生物質の投与を行います。